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2020年11月28日(土)

江國香織(えくに・かおり)

1964年、東京都生まれの小説家にして児童文学作家にして翻訳家にして詩人。

 

1987年に『草之丞の話』で「小さな童話」大賞を受賞して作家デビュー。童話集『こうばしい日々』で第7回坪田譲治文学賞を受賞。1992年には薬師丸ひろ子主演で映画化もされた『きらきらひかる』で第2回紫式部文学賞を受賞。

以降、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で第15回山本周五郎賞、『号泣する準備はできていた』で第130回直木賞、『真昼なのに昏い部屋』で第5回中央公論文芸賞、短篇「犬とハモニカ」で第38回川端康成文学賞、『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で第51回谷崎潤一郎賞と、エンターテインメントと純文学の大きな賞を次々と受賞。と同時に、『東京タワー』や『間宮兄弟』のようなベストセラーも数々手がけ、ジャンルの壁に囲いこまれない作風で多くの読者から愛されています。

 

わたしがもっとも好きな作品は今年出たばかりの最新刊『去年の雪』です。

海に遊びにきた女子大生コンビ。浮気と呼ぶには情熱的すぎる関係にうつつを抜かしている、もうすぐ40歳の男。夫を亡くして以来、死者と交信できるようになった初老の女。副業で男性コンパニオンをしている整体師の若者。レストランで旧交を温める高校時代の級友たち。そのレストランのオーナーシェフとつきあっている女の子。デートが楽しめない16歳女子。バーに集う常連客たち。妻の乳房が好きでたまらない夫と、この結婚は失敗だったと思っている妻。遊び興じる双子の女児。子供を産んだばかりの女性。家からほとんど出ない寡婦。掃除に追われる主婦などなど。

登場するのは現代人が中心ですが、そこに平安時代や江戸時代、昭和(1970〜74年)を生きる過去の人々や、現代から過去へとモノを運ぶ不思議なカラスや死者も現れて、人物やエピソードが濃淡さまざまに重なり合いもする。『去年の雪』は、総勢100名を超えるキャラクターが登場する群像劇になっているんです。

1〜3ページほどと短い各エピソードはゆるやかに他の挿話とつながっていて、空間的にも時間的にも遠く離れた他人同士であるキャラクターたちが、知らないうちに他の登場人物と袖振り合っていることが、読者にはわかるように描かれていく。「誰かが誰かと」「何かが何かと」つながっていく豊かな世界。この小説を読んでいると、自分は独りではない、独りで生きてきたのではないということが、しみじみと了解できます。

妻を亡くして以来、スマホでたくさんの写真を撮るようになった男性が作中で呟く〈心に訴えかけてくるものというのは、存外そこらじゅうにあるのだ〉という言葉が胸に響く素晴らしい長篇小説。江國さんがデビュー以来培ってきた、小説家としての全スキルを堪能できる逸品と伝えて躊躇しません。

 

今回の朗読会では、詩作品を中心に、この『去年の雪』からも選んで読んでいただけるとのこと。江國さんの小さな、静かな、しかし深い声音に耳を澄ませたい90分です。

開催日時

2020年11月28日 土曜日 18時開演(17時45分開場)

​会場は表参道のいつもの場所ではありません。ご参加の方には、別途お知らせします。

お知らせ

多数の予約お申込みをいただきました。

予約受付を締め切らせていただきます。

ありがとうございました。

​youtubeの無料ライブ配信(18時〜19時30分)を行います。

配信はALL REVIEWSのご協力をいただいています。

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