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2020年2月15日(土)

第24回AICT演劇評論賞受賞
内田洋一
1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日本経済新聞社入社。
1984年から文化部で舞台芸術を中心に、美術、音楽などを幅広く取材、
2004年から編集委員。
著書『あの日突然、遺族になった 阪神大震災の十年』(白水社)、『風の天主堂』(日本経済新聞出版社)、『現代演劇の地図』(晩成書房)、『危機と劇場』(晩成書房)、編著書『日本の演劇人 野田秀樹』(白水社、AICT演劇評論賞)
日本の現代演劇で大きな足跡を残した劇作家で第一に名があがるのが、別役実さんでしょう。百四十を超える戯曲があり、童話やエッセイも多数あります。どれも別役ワールドとしか言いようのない不思議な感触があります。別役さんの舞台では、電信柱のある宇宙と評される簡素な舞台に男1、女1といった名前のない人たちが現れ、ままごとのようなことを始めたり、コントのようなやりとりをしたりします。いつしか風が吹き、行き場のない根無し草のような人たちの酷薄な人生が浮かび上がるのです。拙著『風の演劇』はそんな風の秘密を探り、満洲引揚げをはじめとする作家の個人史をたどった評伝です。飄々としたたたずまいの別役さんはその実、大変な苦労人で、引揚者家族の辛酸をなめた人でもありました。戯曲解読をしつつ痛感したのは、戦争がもたらした家族離散の運命です。それはいつ、どこでも起こりえる。そこに別役ワールドのこわさがあるでしょう。
内田洋一
美術のおまけ

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