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柳原孝敦「スペイン語圏文学について語る」

2018年11月17日(土)

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柳原孝敦(やなぎはら・たかあつ)

1963年、鹿児島県名瀬市(現奄美市)生まれのスペイン語文学者。東京大学大学院人文社会系研究科教授。

 

スペイン語圏の文学翻訳家の重鎮といえば鼓直、木村榮一、野谷文昭で、1970年代末から本格的に始まったラテンアメリカ文学の日本への紹介によって、わたしのような海外文学好きにスペイン語圏の作家の魅力を伝えてくれた偉大な三賢人なのであります。その道をさらに豊かに切り拓いてくれている研究者にして翻訳家が、今回ご登壇いただく(わたしと同世代の)柳原孝敦さん。

 

ロシア革命、スペイン戦争、第二次世界大戦、キューバ革命と続く戦乱に翻弄された一組の男女の半生を描いた、アレホ・カルペンティエールの大河ロマン『春の祭典』(国書刊行会)。

〈はらわたリアリズムにぜひとも加わってほしいと誘われた〉という冒頭の一文だけで、2010年、日本のガイブン好きの心を鷲づかみにし、上下巻併せて850ページ強のボリュームでも話題になった、ロベルト・ボラーニョの『野生の探偵たち』(共訳)。

イタリア移民の双子がブエノスアイレスの南に位置する港町で開いた食堂のエピソードに端を発し、禁忌の美食を発見する天才料理人へと至る物語の背後に、20世紀アルゼンチン史と移民史の光と闇まで描きこんだ、カルロス・バルマセーダの『ブエノスアイレス食堂』。

〈わたしの物語、というのは、「わたしがどのように修道女になったか」という物語ですが、それはだいぶ早い時期、まだ六歳になったばかりのころに始まりました〉という書き出しをはじめ、物語を読んでいる最中に、つい抱いてしまう予断をことごとく打ち砕かれ、呆気にとられたのち大笑いの繰り返しが味わえるセサル・アイラの『わたしの物語』。

地球外生命体の〈私〉がオリンピック直前のバルセローナにやってくるものの、相棒が行方不明になってしまい──。地球のことを何も知らない宇宙人の経験が、わたしたちの常識や慣習でくもった目をまっさらにしてくれる異化効果満点、かつお腹が痛くなるくらい笑えるエドゥアルド・メンドサのコミック・ノヴェル『グルブ消息不明』。

ある事件に巻き込まれたことから人生に狂いが生じていってしまう男の魂の彷徨を描く中、1970年代から80年代にかけてのコカインまみれのコロンビア暗黒史が浮かび上がってくる、ミステリーファンにもオススメしたいフアン・ガブリエル・バスケスの『物が落ちる音』。

 

などなど、柳原さんの訳すスペイン語圏作家の小説はバラエティに富んでいます。しかも、お話上手。わたしは柳原さんの講演を聴いたことがあるんですが、かなり専門的な内容だったにもかかわらず、解説がわかりやすく、知的好奇心をかき立ててくれる1時間でした。

今回は『野生の探偵たち』を中心に、朗読と解説と翻訳裏話をして下さる予定。ボラーニョのファンや、スペイン語圏小説のファンの方は聴き逃せないイベントになること必至です。(文責・豊崎由美)

​美術のおまけ

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開催日時

2018年11月17日 土曜日 18時開演(17時開場)

ゆっくり展示美術をご覧いただけるよう、1時間前の開場です。

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