top of page

「夫・車谷長吉」を語る
2017年12月2日(土)
高橋順子

車谷長吉(くるまたに ちょうきつ)は最後の私小説作家といわれる一方で、毒虫と疎まれ、自分でも奇人・変人ぶりを認めた異色の作家だったと思います。『赤目四十八滝心中未遂』で直木賞を受賞しました。
朝日新聞の人生相談の回答者でもあり、その回答は世の良識に富んだ人びとからは顰蹙をかいましたが、喜ぶ人もいて、人気があったようです。
私たちの結婚は晩かったのですが、約22年をともに過ごしました。強迫神経症、芥川賞落選、リストラ、筆禍事件、と悪戦苦闘はしたものの、濃密な日々でありました。
私たちを結びつけたのはものを書くという仕事でしたが、救ったのもそれであったと思っています。二人で句会などもしました。
夫が亡くなった直後は何も言うことも書くこともないと思っていたのですが、遺稿集の注釈や後書きを書くうちに、書きたいものが湧いてきたというわけです。
高橋順子(たかはし じゅんこ)
詩人。1944年千葉県生まれ。東京大学仏文卒。出版社等に勤務。著書に詩集『時の雨』(読売文学賞)、『お遍路』、『あさって歯医者さんに行こう』、『海へ』(藤村記念歴程賞、三好達治賞)、エッセイ集『一茶の連句』『水のなまえ』『夫・車谷長吉』、佐藤秀明写真による『雨の名前』『風の名前』『月の名前』『恋の名前』、小説集『緑の石と猫』『海へびのぬけがら』など。「歴程」同人。
『夫・車谷長吉』について
高橋順子
bottom of page