大瀧詠一 ナイアガラの夜 by萩原健太

2017.6.17(土)

 いつまでも、あると思うな、ナイアガラ。

 大滝さんが生前、口癖のように繰り返していた言葉だ。半ば冗談交じりに、ではあった

けれど、油断はできない。どんなにシリアスな話題を口にするときでも、大滝さんの語り

口には常に独特のユーモア感覚がまぶされていて。本気なんだか冗談なんだか。こちらは

翻弄されるばかり。が、そうこうするうちに、いつしか気がつくと話は核心へ。この瞬間

の意外性とダイナミズムがたまらなかった。

 そして、冒頭の言葉もまた、突然のように現実となってしまった。年の瀬に突然舞い込

んだ逝去の報からすでに3年。いまだに信じられない思いでいらっしゃるファンの方も多

いことだろう。ぼくもそうだ。

 大滝詠一とは何者なのか。

 とらえ方はたぶん人それぞれ。彼の作品に初めて出会った時期、接したメディアによっ

てまったく違うのだろう。60年代末、日本語詞によるロック音楽の礎を築いた伝説のバン

ド、はっぴいえんどのメンバーとして。あるいは、70年代初頭、まだ音楽界の誰もテレビ

CMという“場”に着目していなかった時期に、いち早く実験心あふれるCMソングをお茶

の間へ送り込んだクリエイターとして。日本初の本格的個人レーベル、ナイアガラ・レコ

ードの創設者として。山下達郎ら新しい個性を世に送り出したプロデューサーとして。日

本土着の音頭のリズムを洋楽的な感覚で再構築したアイデアマンとして。黄金の耳を持つ

録音エンジニアとして。流麗なトークと斬新な選曲で聞き手をとりこにするラジオDJと

して。松田聖子や森進一、小林旭らに名曲を提供した作曲家として。そして、81年に発売

されて以来、現在までロングセラーを記録し続ける名盤『ロング・ヴァケーション』を作

り上げたヒットアーティストとして…。

 大滝さんがぼくたちに残してくれたものはあまりにも膨大だ。彼は時に“多羅尾伴内”な

る変名を名乗った。古い日本映画ファンならばご承知の通り、“7つの顔を持つ”と言われる、

変装が得意な架空の探偵の名前だ。なるほど。7つの顔、というのも当たり。探偵、とい

うのもある意味当たり。ここにずらり書き並べた、とても7つじゃすまないあらゆる顔、

それぞれが大滝詠一だった。その多彩さ、あるいは多才さのすべてが彼の作品には分かち

がたく凝縮されていた。

 というわけで、4月8日。大滝さんが残した様々な作品を振り返りながら、その雄大さ

のほんの一端をみなさんと分かち合う時間を過ごしましょう。ナイアガラ・ムーンがまた

輝く夜。とびきりお賑やかに、ね。

                                    萩原健太

萩原健太

1956年、埼玉県生まれ。早川書房を81年に退職後、音楽評論家、DJ、プロデューサーなどとして音楽の周辺で仕事を継続中。

最新刊は『アメリカン・グラフィティから始まった』『70年代シティ・ポップ・クロニクル』(エレキング・ブックス)。

開催日時

2017年6月17日 土曜日 18時開演(17時30分開場)

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お知らせ

 

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予約受付を締め切らせていただきます。

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